医学生・研修医の皆様へ
To medical students and residents

入局のお誘い

画像診断は今やどの診療科においても必須のスキルであるが、 画像診断を専門とする医師極めて少ない。即ち画像診断は、医療現場においてニーズとサプライ(需要と供給)が 最もミスマッチである診療科の一つである。 画像診断医であることの楽しさは、 読影そのものの魅力仕事の多様性に起因する自由度常に科学技術の最先端と共に歩むスリル仕事場所や時間的束縛の少なさ等々、枚挙にいとまがないが、とりあえず上記4項目に焦点を絞り解説する。

読影のおもしろさは、画像所見を正確に捉え、理路整然と整理分析し、持てる知識を加え正しい診断を導き出す、 観察力・論理性・分析力・知識を総動員しての謎解きのおもしろさがあることは言うまでもない。加えて、主治医のスタンスとは全く異なる画像というフィルターを通し、病態を違った側面から観察し、新たな情報をもたらしうる点が、診療という視点からみた場合の大きな魅力といえる。肝臓、消化管、子宮などといった原疾患の個々の臓器にとらわれることなく 患者さん・病態の全体像を見ることができる点も大きな魅力といえる。

仕事の多様性を説明する為には、まず画像診断科の診療体制、守備範囲を解説する。診療内容はCT・MR・PETを含む核医学検査、胃・大腸透視、超音波、血管造影・腫瘍塞栓術・ステント留置・超音波やCTを用いた膿瘍ドレナージなどいわゆるIVRといわれる領域、超音波やCTガイドによる生検、RIミサイル療法と呼ばれる同位元素内服療法等々、 極めて広い領域をカバーしている。胸部単純写真などの単純写真の読影についても、要望は極めて強いが人手不足で手が回らないのが現状である。扱う臓器、装置は多彩であり、診断科という名称ではあるが、実際は診断から治療まで幅広い仕事内容であることを理解してもらえると思う。

結果として、教育期間を過ぎ専門医となった後の診断医の在り方は多様である。日がなモニターの前に座り目と頭を駆使する読影を好む人、血管造影や超音波を用いた観血的手技(穿刺、切開などを伴う技術)に熟達したIVR専門医に特化し、決してモニターの前に座ることのない人、等々この多様性は当科の特徴である。さらに、診断を専門とする診断医の中でも、領域を限らず general radiologist として広い守備範囲を誇るスタッフがいる一方、頭、肺、肝臓など特に興味をもつ臓器の画像診断に特化するスタッフもあり、さらにはある臓器については、あらゆる装置と手技を駆使し診断から治療にも関与するスタッフなど、診断医の在り方は実に多彩である。即ち、いったん科を選択した後さらに、 自分の志向によって守備範囲を決定していける自由度の高さは画像診断科の大きな魅力の一つである。

この4半世紀で最も進んだ分野は遺伝子工学と画像と言われる。今の学生、研修医諸君にとってCT・MRのない医療は想像できないと思うが、4半世紀前にはまだMRは無く、プロトタイプのCTすら特殊な施設に導入されているのみであった。私の入局当時(1979)の一般放射線科医の業務は、午前は放射線治療外来や胃腸透視、午後はそれらや胸部X線写真の読影程度であった。しかし、1980年前半、躯幹部CTの爆発的な普及によってこの生活は一変、昨今では数台のCT・MR稼働が当たり前、画像診断医はCTやMRの読影のみならず、膨大なデータの後処理にて三次元画像処理・仮想内視鏡・手術ナビゲーションなど多彩な情報を提供し診療に貢献している。このめざましい画像診断の進歩は25年前には、誰一人として予測しえなかったものであり、20年後の画像診断の在りようはさらに想像を絶するものがある。我々は常に科学技術の最先端と共に歩む科であるいう言葉は決して誇大ではない事、めざましい変化を遂げる最先端医療を駆使して仕事をすることはスリリングな楽しさを伴うことは理解して貰えるのではないかと思う。また、このような急激な発展を遂げた科であるからこそ、如何に専門医が不足しているかは想像に難くないと思う。急激なニーズの増加においつけず、基幹病院においてすら画像診断医不足の状況が切実である。

最後に、“仕事をする場所や時間の制約の少なさ”について簡単に説明したい。即ち来院患者さんは長時間待って貰うわけにはいかず、難解であるからといって病院から病院へ瞬時に移動して貰うわけにはいかないが、 画像診断は時間的・空間的制約を超えることが容易で(緊急症例の診断は例外)、手に負えなければデジタルデータとしてネットワークを通じ病院から病院、国から国へと容易に情報を伝達することができる。こういった画像診断の特性をいかし、産休や子育て中の女医さんや留学中の診断医のマンパワーをいかす、さらに将来は読影医全体の診療様態を多様にすべく 遠隔画像診断という新しいビジネスも起業されつつある。

以上のように、多様で、自由で、楽しい診療科に、ぜひ一人でも多くの人が入局して、診療サービスの質・量を改善させるべく共に働いてくれることを切に望みます。若手の能力をのびのびとかつマキシマムに開花させうる教育体制を整えて、一人でも多くの方々の入局を待っています。

入局に関する情報は、「入局情報のページ」に載せておりますので、是非ともご覧下さい。