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COVID-19(新型コロナウイルス)肺炎の画像診断(2020/05/05)

2020年5月現在、COVID-19(新型コロナウイルス)が流行しているため、CT画像の読影をしていると COVID-19肺炎への対応が問われます。
まず、 COVID-19 肺炎のスクリーニングのためにCT を撮影することは推奨されていません。診断能に限界があり、感度も特異度も決して高くないからです。そして、COVID-19 陽性の方の検査には他の方との動線の分離や担当者の防護や装置の消毒などが必要とされて現場に大きな負担がかかるという問題があります。検査の後に COVID-19 陽性と判明する場合もあります。
とはいえ、 CT が COVID-19 肺炎の診断に役立つことがあるのも確かですので、COVID-19 陽性と判明している人に対してCOVID-19 肺炎の有無を精査するために CT が撮影されますし、発熱や咳といった症状がある人に対してその原因が COVID-19 肺炎でないかを調査するためにCT が撮影されることもありますし、特に COVID-19 の可能性を考えていない場合でも別の目的で撮影した CT で偶発的に肺野に異常陰影が見つかってCOVID-19 肺炎の可能性を評価する必要が生じることもあります。
となると、個々の症例において CT 画像に写った所見が持つ臨床的な意義を適切に伝達することが大切になります。画像診断が臨床に与える影響が大きいからです。単純に COVID-19 肺炎が「ある」か「ない」かを書くだけでは適切ではありません。感度にも特異度にも限界があり、画像にバリエーションが大きく、他の疾患に起因する画像所見とのオーバーラップも多く、それに、まだわかっていないことも多いからです。

そこで、画像診断医が COVID-19 肺炎の所見を認識して画像診断レポートで適切に伝えることを支援するために、COVID-19 肺炎の画像診断に関する専門家の総意を纏めたものが、米国胸部放射線学会(Society of Thoracic Radiology)・米国放射線科専門医会(American College of Radiology)・北米放射線学会 (Radiological Society of North America) の支持を得て、Radiology: Cardiothoracic Imaging 誌に論文として発表されました。

Simpson S et al. Radiological Society of North America Expert Consensus Statement on Reporting Chest CT Findings Related to COVID-19. Endorsed by the Society of Thoracic Radiology, the American College of Radiology, and RSNA.
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200152
(Published under a CC BY 4.0 license)


それに沿って画像診断レポートを作成するとCOVID-19 肺炎の可能性に関する記述によって問題を引き起こす可能性が低いと考えられますのでご紹介しようと思います。

CT でCOVID-19肺炎に関して記述する際に、以下の4種類のテンプレートのいずれかを使用します。

典型的 COVID-19肺炎の像として報告されている所見があります。ただし、インフルエンザ肺炎、器質性肺炎、薬剤性肺炎、膠原病肺でも同様な像を呈することがあります。[Cov19Typ]^
不明確 COVID-19肺炎でみられることのある像ですが、非特異的で、 さまざまな感染あるいは非感染性疾患の所見と重複します。[Cov19Ind]^
非典型的 COVID-19肺炎としては非典型あるいは稀な所見であり、他の疾患の可能性を考えます。[Cov19Aty]^
肺炎なし 肺炎を示唆する所見はありません。(注意:COVID-19肺炎の初期には、CT所見が陰性となることがあります。)[Cov19Neg]^

適用対象とする症例は以下のものです。

精査症例 発熱や咳などの原因調査中の症例
COVID-19 が陽性と判明している症例
偶然症例 精査症例ではないが、CT で COVID-19肺炎の可能性がありそうな陰影を認める症例

ここで重要なのは、この4分類は、あくまでもCOVID-19肺炎らしさという観点での 画像所見の分類であり、COVID-19肺炎である確率に言及しているわけではないということです。

画像所見を 典型例/不明確/非典型的/肺炎なし に分ける基準は以下の通りです。

典型的

以下のいずれかの所見を認める

  • 末梢性や両側性に分布する GGO(コンソリデーションやcrazy-paving は有ってもなくてもよい)
  • 多発性の丸い GGO(コンソリデーションやcrazy-paving は有ってもなくてもよい)
  • Reverse halo sign をはじめとする器質化肺炎の所見(発症から時間が経過した症例でみられることがある)
典型的画像1
典型的画像2
典型的画像3
<参考:インフルエンザ肺炎>
典型像に類似
前記の文献より引用

不明確

典型例の所見を認めず、かつ、以下のいずれかの所見を認める

  • 多発性や瀰漫性や肺門周囲優位や片側性に分布する前記以外の GGO(コンソリデーションは有ってもなくてもよい)
  • (複数だが)多くなく、末梢優位の分布を示さず、丸くなくて小さな GGO(浸潤影やcrazy-paving は有ってもなくてもよい)
不明確画像
前記の文献より引用

非典型的

前記の典型例や不明確の所見を認めず、かつ、以下のいずれかの所見を認める

  • GGOを伴わない、肺葉性または区域性のコンソリデーション
  • 明瞭な小結節(小葉中心性、tree-in-bud)
  • 空洞
  • 胸水を伴う、小葉間隔壁の不整でない肥厚
非典型的画像
前記の文献より引用

肺炎なし

肺炎を示唆する所見を認めない