留学者の声
飯間 麻美 先生
2011年9月より2012年6月までの10ヶ月間、フランス、パリの近郊にあります Neurospin に フランス政府給費生として留学する機会を与えて頂きましたので、ご報告申し上げます。
Neurospin は 2007年に立ち上げられた、最先端の MRI装置を擁する大規模な高磁場MRI 研究センターです。フランス原子力庁には多くの基礎研究組織があり、Neurospin はその内の生命科学部門の医科学画像研究所に属しています。建物の設計が特徴的で美しく、サインカーブを模した外部構造の1周期毎に、MRI装置が格納されています。パリ市内からは電車とバスを使用して約1時間で到着するのですが、研究所の周囲は非常に自然豊かな環境で春には野ウサギやモグラ、水鳥が出迎えてくれたり、とパリとは別世界のような場所でした。
Neurospin 所長の Denis Le Bihan 教授のご指導のもと、17.2テスラの Bruker製MRIを使用し、ラットの脳腫瘍モデルにおける IVIM (intravoxel incoherent motion: 拡散強調画像の低b値データにおいて観察される、水分子の拡散と毛細血管内の流れ(還流)) に関する研究を主にさせて頂きました。動物実験は初めての経験であり、また高磁場MRIの特性もあり、少しの固定の緩みや条件がやや異なるだけでもデータが上手く出ず、最初は困難の連続でしたが、チームのメンバーに親切に色々と教えて頂いたお陰で、最終的にはある程度まとまったデータを収集するまで至りました。
私が参加させてもらったチームは アメリカ含め各々の国籍が異なる優秀な研究者から構成されており、その中で基礎実験に取り組ませて頂いた事は貴重な経験となりました。また、3テスラのヒトの functional MRI の研究にも関わらせて頂きました。Neurospin では毎週のようにフランス国外を問わず一流の研究者によるレクチャーが行われ、多分野における最先端の話を聞くことができ勉強になりました。昼食後には(しばしば朝も)カフェスペースに多くの人が集まり、MR physicistを初めとする専門家の方々と様々な分野での議論ができたのは非常に興味深かったです。
子供(2才)と母親との親子3世代での留学だったのですが、在仏中は母親が有り難いことに全面的に子供の面倒を見てくれましたので、その分研究に集中する事ができました。研究所内ではなるべく英語でコミュニケーションを図る様にという雰囲気がありましたが、カンファレンスは基本的にフランス語ですし、議論が盛り上がってくるとフランス語に切り替わる事が多く、最初はついていくのに苦労しました。子供は現地の幼稚園に編入しましたが非常に楽しそうで、渡仏後しばらくするとフランス語を話し始め、友達の輪の中に溶けこんでいました。
最後に、富樫かおり教授をはじめ、留学をサポートして頂いたスタッフ及び教室員の皆様に深く感謝いたします。今後は留学中得た事を少しでも還元できる様、微力ながら努力して参る所存ですのでどうぞよろしくお願いいたします。