医学生・研修医の皆様へ
To medical students and residents

留学者の声

樋本 祐紀 先生

私は2016年4月から2年間、富樫かおり教授のご高配により、米国ニューヨーク州マンハッタンの Memorial Sloan Kettering Cancer Center 放射線科に留学致しましたので、報告させて頂きます。

< マンハッタンでの生活 >

マンハッタンには文字通り多国籍・多民族の人々が暮らしており、街中ではヨーロッパ、南米、アジア、アフリカ、と世界中の国々の文化、さらにそれらが融合されたものを目にすることができ、とても興味深かったです。日本のものも、文字、漫画、食べ物など、色々なものが浸透していました。小学生の息子も、友達とNARUTO(忍者の漫画)でとても盛り上がっていました。

ニューヨークの人々は異文化や他国の人々とふれあうことに非常に慣れているようで、職場や小学校、地域のコミュニティ等、生活の様々な場面で、寛容に受け入れて貰えていると感じることができ、生活費が高いことを除くと想像していたよりずっと暮らしやすかったです。家族の温かいサポートに加え、先にニューヨーク大学に留学されていた藤本晃司先生、同時期に留学し一緒に研究をした舌野富貴先生、山下力也先生・奈都子先生、さらには施設見学や学会に合わせて訪れて下さった先生方にも支えて頂き、さみしい思いをすることなく、楽しく過ごすことができました。

< Memorial Sloan Kettering Cancer Centerについて >

Memorial Sloan Kettering Cancer Centerは、世界的に有数のがんセンターです。基礎・臨床ともに、大規模な研究・革新的な研究が数多く行われており、確かに素晴らしい病院だと実感しました。自分たちの研究から新たな知見が得られると、それを土台に研究を次の段階に推し進める姿勢を組織として持っているように感じました。センターを横断する研究も数多く行われています。その知見を広くセンター内・外に発信するため、専門外の領域に関しても門前の小僧のように耳にすることができ、自分の分野への応用の可能性を考えるなどの機会が持てました。また、医者や研究者、他国からの留学生達が、向上心や高いモチベーションを持って精力的に働く姿は、とても新鮮でした。

< 研究について >

私自身は、舌野富貴先生と共に、放射線科の婦人科癌チームに所属し、メンターのEvis Sala先生、Yulia Lakhman先生の御指導の下、「卵巣癌の免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測における造影CTの有用性の検討」、「卵巣癌の初回治療法選択と再発様式との関連性の検討」 などの臨床研究を担当させて頂きました。研究をするにあたって、日本とのギャップにとても戸惑い、マイナスに感じる面も多かったですが、以下の点には強い印象を受けました。一つ目は、留学生・学生をチームの一員として受け入れ 臨床研究の戦力として活用するシステムが確立されている点です。外部からの人材の活用に対する寛容さ、慣れを感じました。二つ目は、研究に医師、リサーチアシスタント、コンピューターサイエンティスト、統計学者など、多くの職種の人々が関わり、チームとして進められていく点です。また、他科・他分野とのコラボレーションの試みも活発にされていました。進展の遅れなどマイナスに働く部分もありますが、研究の透明性・妥当性を保証する、臨床医の視点を反映するという点では非常に優れていると思いました。

< 最後に >

2年間の留学生活は、嬉しいことにせよ嫌なことにせよ、衝撃的なことが多く、視野が広がり大変勉強になりました。今後留学を考えている先生方がいらっしゃいましたら、失敗を含め自分の経験からお役に立てることがあるかもしれませんので、早めに気軽にお聞きください。
この度の留学のためにご尽力いただいた富樫かおり教授、木戸晶先生、藤本晃司先生をはじめ、教室員の先生方に心より感謝申し上げます。