医学生・研修医の皆様へ
To medical students and residents

留学者の声

中本 隆介 先生

私は、2019 年4月から2年間、米国カリフォルニア州にあるStanford大学のDivision of Nuclear Medicine, Department of Radiologyへの研究留学の機会をいただきました。Stanford大学は当科の三宅可奈江先生、金尾昌太郎先生、野橋智美先生が留学されていた所で、私は野橋先生と入れ替わる形で、臨床の核医学部門であるProf. Andrei Iagaruの研究室にお世話になりました。 私はIagaru教授の研究室で、分子イメージングの研究室より提供された新しいPET薬剤と最先端の半導体PET/CTを併用して得られる、種々の腫瘍内微小環境を反映した機能画像情報を用いた臨床研究を行いました。当研究室では、診療科、研究室、大学の垣根を越えた組織横断的な連携力により、常に10を越える最新の臨床プログラムが同時進行しており、 Iagaru教授の研究室の研究成果の質や量にたびたび圧倒されていました。小さな多民族国家の様な研究室で、一人のアメリカ人医師を除き、Stanfordに憧れて国外から移住してきた医師(ルーマニア、アルゼンチン、スペイン、イラン、ベトナム出身)や研究者(私以外、全員が独身の女医さんで、イタリア、イラン、オーストリア出身)で構成されていました。英語が充分に話せない無名の日本人研究者に対して、留学当初からラボメンバーが公私ともに手厚いサポートをしてくれたのですが、前任の先生方のこれまでのご活躍の賜物であると大変感謝しております。また、Breast RadiologistのProf. Bruce Danielの研究室にもお邪魔させてもらって、マイクロソフトが開発したMicrosoft HoloLensというMixed Realityのヘッドセットを用いたファントム実験のプロジェクトに関わりました。具体的には、3Dの核医学画像を取り込んだヘッドセットを装着することで、ベッドに横たわっている患者体内のセンチネルリンパ節の位置を体表から観察・同定できることを示す研究を行いました。 留学1年目は慣れない環境下で遅々として進まない研究(というよりは諸々の事務手続き)に少々焦りながらも、同僚とのsmall talkで気分が癒やされたり、カリフォルニアの爽やかな青空の下、大学構内の美しい芝生で色々な国出身の若者〜お年寄りとサッカーを楽しみながら、充実した日々を過ごすことができました。子供の授業参観、Iagaru教授宅でのプールパーティー、ハロウィン、Daniel教授宅でのクリスマスパーティーなど、様々なイベント行事にも参加することができました。ところが、ご存じのように2020年3月中旬以降、コロナが全米中に広がり、shelter in placeの指示が出て以来、生活が一変してしまいました。子供の学校は閉鎖され、研究はテレワークに切り替わりました。子供達の妨害に頻繁に遭いながら、慣れないZoom会議でfacultyに指示されたことに沿ってリモートで研究を進めていくことの難しさは予想以上でした。妻の献身的なサポートやアパート近くのchild care centerがオープンしたこともあって、7月頃から研究に打ち込むことができ、1年目よりも大きなプロジェクトを任せて頂ける機会を得ました。また、8月には念願のイエローストーン国立公園、カリフォルニアや隣接する州の様々な国立公園を車で巡ることができました。静寂に包まれた壮大な国立公園の景観の美しさは一度経験すると病みつきになり、連休を利用して国立公園を巡ることが家族の最大の楽しみとなっていきました。物価の高いカリフォルニアにおいて、殆どお金がかからないことも大きな魅力の一つです。コロナ禍の留学2年目は大学で研究することも、イベント行事に参加することも、留学当初の夢の一つであった東海岸へ旅行することもかないませんでしたが、家族とこれまで以上に長く濃密な時間を過ごすことができ、留学して本当に良かったと思っています。 最後になりましたが、この度の留学のためにご尽力いただいた富樫かおり前教授、中本裕士現教授、三宅可奈江先生、野橋智美先生、快く送り出してくれた教室員の先生方に心より感謝申し上げます。
核医学部門のエントランスでIagaru教授(左)とMoradi医師(右)と一緒に
ヨセミテ国立公園のグレーシャーポイントでの家族写真