医学生・研修医の皆様へ
To medical students and residents

留学者の声

早川 延幸 先生

2015年5月から2016年10月までの約1年半、ドイツのヴュルツブルク大学の核医学科樋口隆弘教授の元に留学しました。

< ヴュルツブルク大学について >

ヴュルツブルク大学の所在地であるヴュルツブルク市は、EU 経済の中心でドイツの空の玄関口であるフランクフルトから東南東に100km、高速鉄道を使えばフランクフルト空港から1時間半弱の距離にあります。観光地として日本人にも人気のロマンティック街道の起点となる街です。ヴュルツブルク大学は1402年に設立された伝統のある大学であり、医学部を含む10の学部を有し、過去に14名のノーベル賞受賞者を輩出しています。その中でも我々放射線科医に関係が深いのは何と言っても1895年にX線を発見し、1901年にノーベル物理学賞を受賞したヴィルヘルム・レントゲン博士ではないかと思います。大学には彼がX線を発見した部屋が当時のまま残され、実験器具等が展示されており、見学することができます。

< 留学中の研究について >

ヴュルツブルク大学病院核医学科では樋口教授の指導の下、各種PETトレーサーを用いたイメージングを中心とする動物実験、データの解析を行いました。動物実験に携わるのは初めてでしたが、ここで使用できるトレーサーの種類の多さに驚かされました。実験のある日は朝から夕方まで休まず実験を行うことも多く、緊張感も伴うため、実験が終わる頃にはくたくたになることもしばしばでした。最初の頃は動物実験の いろは も分からない状態でしたが、不慣れであった実験機器、実験動物や解析ソフトの扱い方も1年も経つと慣れて参りました。樋口先生のグループには他大学の日本人医師が私と同時期に留学に来られていた他、薬学、工学系の日本人のプロフェッショナルの方々が集まり、他のラボとも協力して幅広い研究を行っておりました。ここに来ることがなければ絶対に知り合うことが出来なかったであろう、これらの人々と出会い、一緒に仕事を出来たことが何事にも代えがたい財産であったと思います。

< 核医学科での臨床について >

ヴュルツブルク大学病院核医学科のPETセンターでは1台のPET/CTが稼働しており、検査件数は年々増加傾向です。検査の 7割を FDG-PET が占めますが、残りの 3割は18F-FET、68Ga -DOTATOC、11C-Choline、18F-FDOPA、68Ga-PSMA、68Ga-CXCR4など多様なトレーサーを用いた PET検査が行われています。核医学科には放射線治療病棟もあり、放射線性ヨードをはじめとした内用療法を行っております。欧州ではβ線放出核種である177Luや90Yで標識された薬剤による内用療法が進んでおりますが、ヴュルツブルク大学核医学科でも盛んに行われています。

< ドイツの生活について >

ドイツに来た当初、日本とは言語も文化も異なる環境に置かれ ストレスを感じることが多かったですが、家族とともに過ごした日々は大変貴重なものでした。ドイツでは基本的に日曜日は店が閉まり買い物が出来ませんが、その代わり美しい自然の中をドライブして近郊の街を訪れてみたり、子供と公園で遊んだりして家族とゆっくり過ごしました。アウトバーンは無料で基本的に速度制限が無いのは有名ですが、一般道でも郊外では基本的に制限速度が 100km/hなので、少々遠くても気軽に日帰り旅行を楽しむことができます。またドイツと言えばビール!ということで、いずれも値段も安く味もとても飲みやすいです。各街にビールの醸造所があり、沢山の種類のビールを楽しむこともできました。

< 最後に >

約1年半のドイツでの留学生活は時に困難も伴いましたが、何とか乗り越えられたのは同僚や家族の支えのお陰であったと思います。また、留学を後押しして下さった富樫先生、指導教官である中本先生、そして留学中指導をして下さった樋口先生にこの場を借りて御礼申し上げます。